研究所


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研究部紹介

もくじ

沿革 Historical Note

1968年(昭和43年)12月19日、脳卒中とその関連疾患の基礎的・臨床的研究を目的として秋田県立脳血管研究センターが開設され、内科学、外科学、放射線医学、病理学の4研究部でスタートしました。 深澤仁 初代病理学研究部長は東北大学からこの秋田の地に来られ、脳卒中病理学の礎を築くとともに、病理形態所見を定量解析によって客観的に評価することの重要性を唱え、病理検体・試料の均質化や画像解析装置をはじめとする研究環境の整備に尽力されました。当時から保存されている組織標本は現在でも学術的に大変貴重な資料として将来を担う医学生や私たち医療従事者の生涯教育に大いに役立っていますし、未来永劫役立つことになります。

吉田泰二 第二代研究部長は1993年(平成5年)12月に弘前大学から主任研究員として赴任され、1996年(平成8年)より第二代部長に着任されました。吉田部長は基本的には深澤病理を引き継がれましたが、剖検例による臨床病理学的研究では脳卒中のみならず他の神経疾患を含めて幅広い神経病理学を展開されるとともに、酵素抗体法による機能形態学を充実させました。また、動物実験による脳卒中研究と神経科学的研究を発展させるべく、遺伝子実験室を開設しました。遺伝子に関する基礎的知識や最近の話題などについて定期的にミーティングを開催するなどして、古典的神経病理学に遺伝学的・分子生物学的手法を取り入れた新しい神経病理学の発展に寄与されました。

2008年(平成20年)4月より吉田泰二前部長の後任として宮田元が病理学研究部を担当しております。2009年(平成21年)4月には当研究センターの独立行政法人化にともない研究部名を「脳神経病理学研究部」と改称いたしました。2019年(平成31年)3月に当研究センターは秋田県立循環器・脳脊髄センターに改称され、病理診断部門としては「臨床病理部」、研究部門としては研究所脳血管研究センター脳神経病理学研究部となりました。

研究部の紹介 Member of the department

脳神経病理学研究部は脳卒中を含む幅広い中枢神経系疾患を対象とし、その病態解明を目指した各種研究を進めています。

当研究部で取り扱う研究試料は以下の3つです。

ヒト剖検脳・脊髄

神経病理学とは病理学のなかでも神経系領域(脳、脊髄、末梢神経、筋肉)に特化した分野です。神経疾患には未だに有効な治療法が確立されていないものや臨床診断が困難なもの(つまり病理解剖によって詳細に調べなければ確定診断できない病気)が多々あります。このような神経難病のために治療の甲斐なく不幸にしてお亡くなりになった方々の脳や脊髄を病理学的に調べると、生前には理解の難しかった病態が把握できたり本当の病名が判明することがあります。ここまでは病理診断という実は最も大切な臨床業務です。すなわち、この検査結果をもとに医療従事者は勉強して、その知識を明日の医療へつなげていくことが出来ます。さらに将来を担う医学生の教育や若手医療従事者の指導にも役立ちます。一方、ヒト病変組織を対象とする基礎研究においては、病理診断は実験結果の客観性や信憑性を担保する重要な基盤です。この点を踏まえて研究者がより詳しい研究を進めることで、治療法開発のきっけかになるような新たな病態が解明されることも期待できます。

ヒト生検組織

脳神経外科で手術の対象になる病気を幅広く取り扱います。脳組織、腫瘍組織、動脈硬化になった血管やその他の異常血管などがあります。いずれも詳細な病理組織学的評価を行い、どのようにして病変が形成されたのか(病態機序)の解明を目指しています。

実験動物の脳組織

ヒト神経疾患の病態解明のために必要であってもヒトでは行えない研究もあります。この場合は動物実験に頼らざるを得ません。脳卒中のみならず各種神経疾患を再生医療によって治療できるようにならないものかと世の中では多くの研究者が日夜研究を進めています。例えば脳卒中では、脳出血や脳梗塞で壊れてしまった脳組織を再生医療で治療して手足の麻痺を治すことができるようになれば、脳卒中医療の大きな進歩になるわけですが、そのためにはまず脳組織の再生に関する詳細なメカニズムを明らかにする必要があります。脳梗塞発生後には周囲の脳組織に複雑な生体反応が始まり、組織が時々刻々と変化していきます。しかし現実にはその組織変化の全容が解明されているわけではありません。脳神経病理学研究部では治療法の開発にはまず病態解明が必要であるとの立場から動物実験で脳梗塞病変部で起こっている生物学的現象を詳細に検討し、病態機序の解明を目指した研究を進めています。

各スタッフと役割

研究部長(医師)

人数:1名

病理診断から研究総括までを担当します。神経病理学を専門とする医師です。病院では皆さんの主治医が手術で切除した組織の病理診断(組織病名の決定と良性・悪性の判別)を担当しています。患者さんの診察や治療は担当していません。

臨床病理部の紹介

神経病理専門技師

人数:1名

臨床検査技師の国家資格を有するスタッフが組織標本を作製します。組織標本とは研究者が組織を顕微鏡で観察するためのものです。様々な形の標本がありますが、神経病理専門技師が作製するのは主として光学顕微鏡(小・中学校の理科の授業で使う顕微鏡と同様です)で観察するための標本です。組織は特殊な処理を施した後に剃刀の刃で3から7マイクロメートルの厚みにスライスし、薄い硝子板に貼付し、色素で染色したものです。一般に、私たち人間の眼はおよそ0.2ミリメートル離れていれば2点を2点として識別できますが、これ以上細かい部分を見分けるのは困難です。光学顕微鏡を使えばおよそ0.2マイクロメートル(1マイクロメートル=1,000分の1ミリメートル)離れている2点を識別できます。

任期付研究員

人数:2名(現在欠員、随時募集中)

研究補助としての役割にとどまらず、競争的資金を獲得して主体的に研究を行うこともできます。

特任研究員

人数:現在4名在籍中

医学生が放課後等の時間を利用して研究活動に参加し、学会や研究会等で症例報告を行っています。

秘書(秘書室所属)

人数:1名

脳神経病理学研究部内の庶務業務、検体検査書類管理、その他医師事務作業補助の業務に従事します。脳神経病理学研究部ホームページの更新作業も行っています。

医学生の見学・実習について

脳神経病理学研究部では夏季休暇等を利用した医学生の見学・実習を随時行っています。見学・実習希望の際はスケジュール調整等のため遅くとも実習希望開始日の3週間前までに電話かメールでお問い合わせ下さい。

研究配属実習で病理学を希望したが諸事情で配属されなかった、病理実習に加えさらに神経病理学の実習も体験したい、脳の解剖学を再勉強したい、脳梗塞に関する動物実験を見学したいなど、様々な事情や希望があるでしょう。とくに神経病理学は全国的に教室が極めて少ないため基礎配属実習で神経病理学に触れる機会もめったにありません。好奇心旺盛で多感な学生時代に神経病理学の世界を知らずして卒業してしまうのはもったいないことです。神経内科学、小児神経学、脳神経外科学、精神神経学といった「臨床神経学」の背景となる基本病理を学び、臨床症状との対比を行いながら神経疾患の理解を深めることは、とくに医師として神経疾患の医療に携わっていく上では大変重要なことです。実習では病理標本作製技術や電子顕微鏡技術なども体験できます。神経病理学の臨床業務から研究活動まで幅広く体験してみてください。

脳神経病理学研究部長の略歴 Profile of the director

脳神経病理学研究部長

宮田 元 Hajime MIYATA, M.D., Ph.D.

略歴

1992年
(平成4年)
鳥取大学医学部卒
1996年
(平成8年)
鳥取大学大学院医学系研究科外科系専攻博士課程修了(医学博士)
医療法人 十字会 野島病院 脳神経外科 医師
同年10月鳥取大学医学部附属脳幹性疾患研究施設脳神経病理部門 助手
2001年
(平成13年 )
文部科学省長期在外研究員(若手別枠)
UCLA Medical Center 神経病理部門 客員研究員
2002年
(平成14年)
研究休職
UCLA Medical Center 神経病理部門 研究員
2003年
(平成15年)
鳥取大学 復職
2007年
(平成19年)
鳥取大学医学部附属脳幹性疾患研究施設脳神経病理部門 助教
2008年
(平成20年)
秋田県立脳血管研究センター病理学研究部 部長
秋田県立脳血管研究センター
臨床病理部 部長
2019年
(平成31年)
地方独立行政法人 秋田県立病院機構
秋田県立循環器・脳脊髄センター(改称)
臨床病理部 部長
研究所 脳血管研究センター 脳神経病理学研究部 部長
久留米大学医学部 客員教授

所属学会

専門分野

神経病理学

現在の研究領域

  • 難治性てんかんの外科病理学と病態解明
  • ヒト神経疾患の生検・剖検組織を対象とした神経病理学的病態解明
  • 脳動脈瘤の病理組織学的解析
  • 虚血性脳血管障害の病理

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