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脳神経病理学研究部からのお知らせ

第29回東北神経病理研究会(2023年10月28日:岩手医科大学)で阿部純平(特任研究員)と蓮江光馬(特任研究員)が優秀演題賞をダブル受賞

第29回東北神経病理研究会(2023年10月28日:岩手医科大学)で,阿部純平(特任研究員,秋田大学医学部3年)を筆頭演者とする症例報告「点頭てんかんの1手術例に認められたアストロサイト封入体」および蓮江光馬(特任研究員,秋田大学医学部4年)を筆頭演者とする症例報告「小児難治性てんかん患者の一手術例における大脳皮質形成異常と白質の海綿状変化」がそれぞれ優秀演題賞を受賞しました。両名とも次の学会発表に向けて鋭意活動中です。

第46回日本てんかん外科学会・教育講演で「てんかんの外科病理 –– FCDの最新版ILAE分類の概略 ––」について発表しました

第46回日本てんかん外科学会(会長:藤井正美・山口県立総合医療センター脳神経外科診療部長,2023年1月26−27日,山口市・ハイブリット開催)での教育講演で,「てんかんの外科病理 –– FCDの最新版ILAE分類の概略 ––」と題して講演しました(リモート登壇)。2011年にfocal cortical dysplasia(FCD)の国際抗てんかん連盟(ILAE)分類が提唱されて以来10年以上が経過しました。ILAEでは2017年にFCD Classification Task Forceが設置され,2011年以降の知見に関する文献調査と併せて,分類自体の有用性や妥当性について評価を行うなどの検討が進められ,昨年に分類のアップデートが公表されました。

講演では,Task Forceの一員として分類の改訂作業に関与した立場から,その検討内容やを含めて2022年分類の概略について解説しました

なお,この講演内容はオンデマンド配信(2023年2月14日〜28日)で視聴できます

詳しくは下記をご覧下さい。

https://www.kwcs.jp/essj2023/

遺伝性脊髄小脳失調症7型(spinocerebellar ataxia type 7: SCA7)の詳細な臨床病理所見を記した症例報告が学術雑誌Neuropathologyに掲載されました

遺伝子検査で確定診断された全脊髄小脳失調症のうち,脊髄小脳失調症7型(SCA7)は世界的に少なく,我が国では極めて稀とされています。このため,小脳失調以外の様々な神経症状が実際に脳や脊髄のいかなる病変に起因するのか,これまでその実態は必ずしも明確にはされていませんでした。本疾患の一剖検例について私たちは臨床病理学的に詳細な検討を加えたところ,眼球運動や聴覚,視覚,および感覚の障害が,それぞれの神経機能をつかさどる神経投射系の系統変性によるものである可能性を指摘しました。今後はなぜ特定の神経投射系が変性に陥るのか,その特徴的な病変分布を制御する病態機序の解明が望まれます。

詳しくは下記をご覧ください。

Ouchi H, Ishiguro H, Shibano K, Hara K, Sugawara M, Enomoto K, Miyata H. Primary degeneration of oculomotor, motor, and somatosensory systems and auditory and visual pathways in spinocerebellar ataxia type 7: A clinicopathological study in a Japanese autopsy case. Neuropathology 2022. https://doi.org/10.1111/neup.12869

FCDのILAE最新分類(2022年)が学術雑誌Epilepsiaに掲載されました

限局性皮質異形成(Focal Cortical Dysplasia: FCD)の国際抗てんかん連盟(ILAE)分類(2011年)が公表されて以来,早くも10年が経過しました。この分類を研究基板としてこれまで様々な新知見がもたらされる一方で様々な問題点も明らかになりました。なかでも,病理組織診断の再現性が必ずしも十分高くないという課題については,形態学的所見に病変の遺伝子異常の情報を組み入れることで,観察者間のばらつきを少なくし,より客観的な診断につながるシステムとなりました。実は,このような取り組みは既に脳腫瘍病理の領域で応用されているのですが(WHO脳腫瘍分類2021),FCDのILAE分類体系は具体的に以下のような階層化した統合診断(integrated diagnosis)を提案しています。

1)病理組織学的情報

  A)具体的な組織学的所見の記載

  B)ILAE分類(FCD type Ia, IIb, IIIcなど)

2)遺伝子情報

3)神経放射線学的所見

4)以上を踏まえた統合診断(病変の全貌を一言でまとめたもの)

このようにFCD ILAE分類(2022年)は2011年分類の基本骨格を維持したまま,「てんかんの集学的医療」により則したものとなっています。

実臨床においてFCDの遺伝子検査を日常的に行える施設は極めて限られていますので,今後は遺伝子診断技術の普及や遺伝子診断支援センターなどが必要になるでしょう。

詳しくは下記をご覧ください。

Najm I, Lal D, Alonso Vanegas M, Cendes F, Lopes-Cendes I, Palmini A, Paglioli E, Sarnat HB, Walsh CA, Wiebe S, Aronica E, Baulac S, Coras R, Kobow K, Cross JH, Garbelli R, Holthausen H, Rössler K, Thom M, El-Osta A, Lee JH, Miyata H, Guerrini R, Piao YS, Zhou D, Blümcke I. The ILAE consensus classification of focal cortical dysplasia: An update proposed by an ad hoc task force of the ILAE diagnostic methods commission. Epilepsia. 2022 Jun 15. doi: 10.1111/epi.17301.

脳に好酸球性血管炎を来した特発性好酸球増多症候群患者の臨床病理学的検討が学術雑誌Neuropathologyに掲載されました

一般に,血管炎はThe 2012 revised International Chapel Hill Consensus Conference nomenclature(CHCC2012)の臨床病理学的定義に従って分類されています。本症例報告ではCHCC2012のいずれの疾患定義にも合致しない血管炎が存在するという問題提起を含めて,分類困難な血管炎を臨床病理学的に如何に解釈するべきか議論するとともに,臨床病理学的に厳密に検討された類似症例の報告がないことや,あるとしても好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)と解釈されている可能性についても指摘しています。好酸球増多症候群で中枢神経血管炎を生じることは稀(1%程度)ですが,本症例報告を契機に類似症例の報告が蓄積され,病態解明と疾患概念確立のための研究につながることを期待しています。

詳しくは下記をご覧ください。

Noro Y, Miyata H, Furuta T, Sugita Y, Suzuki Y, Kusumi M, Tanabe M, Shomori K: Tumefactive eosinophil-rich non-granulomatous small vessel vasculitis in the cerebrum in a patient with idiopathic hypereosinophilic syndrome. Neuropathology 42: 239-244,2022

頭蓋内血管奇形に伴う大脳皮質形成異常(FCD type IIIc)に関する病理組織学的研究の成果が学術雑誌Brain Pathologyに掲載されました

脳に発生する血管奇形は脳卒中のみならず難治性てんかんの原因になることもあります。難治性てんかんに対する手術治療で切除された脳組織検体の病理組織を観察すると,血管病変に隣接する大脳皮質に組織構築異常が見つかることがあります。これを専門用語で限局性皮質異形成(FCD type IIIc)と記載するのですが,その組織構築異常の具体的特徴や発生機序,病態学的意義などについては先行研究がほとんどなく,これまで詳細は不明でした。この研究では自験例の病理組織を後方視的に検討し,FCD type IIIcの組織学的特徴の詳細を明らかにするとともに臨床病理学的にその発生機序を推論してみました。

詳しくは下記をご覧ください。

Miyata H, Kuwashige H, Hori T, Kubota Y, Pieper T, Coras R, Blümcke I, Yoshida Y. Variable histopathology features of neuronal dyslamination in the cerebral neocortex adjacent to epilepsy-associated vascular malformations suggest complex pathogenesis of focal cortical dysplasia ILAE type IIIc. Brain Pathol 2022: e13052. doi: 10.1111/bpa.13052

てんかん原性脳病変の病理組織像から結節性硬化症が疑われ遺伝子検査で確定診断に至った症例の報告が学術雑誌Neuropathologyに掲載されました

結節性硬化症の皮質結節(TSC-tuber)と限局性皮質異形成(FCD Type IIb)は組織学的に類似点が多く両者を正確に鑑別するのは困難とされていますが,AIを応用した最近の国際共同研究から両者の鑑別に有用な組織学的特徴も抽出されています(Kubach J et al., Epilepsia 61: 421-432, 2020)。このことについては前回ご紹介しました。

今回報告した論文では,提示症例をもとにTSC-tuberとFCD Type IIbの組織学的相違点を文献的考察を含めて整理するとともに,てんかん外科組織マイクロアレイ(63例,420コアを含む)を用いたスクリーニングによってCD34 class IIという造血幹細胞マーカーを発現するアストロサイト様細胞がTSC-tuberで豊富かつ高頻度に出現することがFCD Type IIbとの相違点の一つであることを示し,CD34 class II免疫組織化学が両者の鑑別に有用であることを初めて指摘しました。

結節性硬化症は全身の様々な臓器に先天性の良性腫瘍を生じる常染色体優性遺伝性疾患です。多くの場合,出生時には皮膚の白斑(約100%)が見られ,胎生期から乳児期に発見される心臓腫瘍(約60%),乳幼児期にはじまるてんかん発作(約80%),自閉症,精神発達遅滞,顔面の血管線維腫,脳腫瘍,小児期以降の腎臓腫瘍,成人期以降の肺や消化管などを含む各種内臓器の腫瘍など,さまざまな症状があらわれます。しかしながら,これらの症状は出現時期も程度もさまざまですので,症状が少なくて臨床的診断基準を満たさない患者さんもいます。そのような場合でも手術検体の病理所見から結節性硬化症の可能性を指摘することで,その後の正確な早期診断と適切な医学的管理につながることもあります。したがって「TSC-tuberを疑う病理所見」は臨床診断基準の補遺に匹敵する項目として役立つと思われます。

詳しくは下記をご覧ください。

Miyata H, Fushimi S, Ota Y, Vinters HV, Adachi K, Nanba E and Akiyama T: Isolated cortical tuber in an infant with genetically confirmed tuberous sclerosis complex 1 presenting with symptomatic West syndrome. Neuropathology 41:58-64,2021 doi :10.1111/neup.12700

結節性硬化症の皮質結節(TSC-tuber)と限局性皮質異形成(FCD Type llb)をHE染色標本で見分けるAIの開発に関する国際共同研究の成果が学術雑誌Epilepsiaに掲載されました

TSC-tuberとFCD Type llbは組織学的に類似点が多いため両者を正確に鑑別するのは困難とされています。それぞれ20例(合計40例)のHE染色標本をバーチャルスライド上に確定診断を伏せた状態でランダムに並び替え,これらを専門的知識を有する神経病理医11名が鑑別したところ平均正答率は72.3%でした。これは神経病理未経験者(病理レジデントや医学生など)12名の平均正答率43.8%に比して当然高い結果ですがAIに深層学習させて鑑別診断させたところ正答率は91%でした。逆に,AIがどのような特徴を鑑別点として認識しているのかを解析したところ,我々があまり注目していなかった形態学的特徴がいくつか抽出されました。それらを利用して我々人間があらためて鑑別診断したところ,神経病理医の正答率は76.5%(わずか約4%向上),未経験者の正答率は69.2%(なんと25.4%も向上)となりました。TSC-tuberとFCD Type llbをHE染色標本で見分けるコツをAIから教えて頂きました。

ちなみに,論文のタイトルにある「same same but different」とは「似ているが違う」という意味のタイ英語です。

詳しくは下記をご覧ください。

Kubach J, Muehlebner A, Soylemezoglu F, Miyata H, Niehusmann P, Honavar M, Rogerio F, Kim SH, Aronica E, Garbelli R, Vilz S, Popp A, Walcher S, Neuner C, Scholz M, Kürten S, Schropp V, Röder S, Eichhorn P, Eckstein M, Brehmer A, Kobow K, Coras R, Bluemcke I and Jabari S*: Same same but different: A Web-based deep learning application revealed classifying features for the histopathologic distinction of cortical malformations. Epilepsia 61: 421-432, 2020

Dual pathologyにおける海馬硬化症の形成機序とてんかん原性獲得機序を臨床病理学的に考察した症例報告が学術雑誌Neuropathologyに掲載されました

海馬病変の解析では須藤冴子(特任研究員),側頭葉新皮質病変の解析では桑重はる香(特任研究員)がそれぞれ大活躍

第60回日本神経病理学会総会学術研究会(2019年7月14日〜16日,名古屋市)で須藤冴子(特任研究員,発表当時は秋田大学医学部5年)を筆頭演者とする症例報告「脳腫瘍治療後のグリア瘢痕と海馬硬化症を伴う側頭葉てんかんの1手術例」(優秀学生ポスター賞)に若干の追加検討を加えまとめたものです

詳しくは下記をご覧ください。

Miyata H, Sudo S, Kuwashige H, Miyao S, Nakamoto H, Kubota Y and Yoshida Y: Dual pathology in a patient with temporal lobe epilepsy associated with neocortical glial scar after brain abscess and end folium sclerosis/hippocampal sclerosis type 3. Neuropathology 41:42-48, 2021 doi:10.1111/neup.12696

低血糖による大脳新皮質障害と炎症反応の経時的変化に関する共同研究が学術雑誌Neuropathologyに掲載されました

詳しくは下記をご覧ください。

Tomita N, Nakamura T, Sunden Y, Miyata H, Morita T:Temporal analysis of histopathology and cytokine expression in the rat cerebral cortex after insulin-induced hypoglycemia. Neuropathology 40:240-250,2020 doi:10.1111/neup.12643      

ヒト側頭葉てんかん患者の海馬における神経新生に関する共同研究が科学雑誌Scientific Reportsに掲載されました

詳しくは下記をご覧ください。

Seki T, Hori T, Miyata H, Maehara M, Namba T. Analysis of proliferating neuronal progenitors and immature neurons in the human hippocampus surgically removed from control and epileptic patients. Sci Rep 9, 18194 (2019) doi:10.1038/s41598-019-54684-z

徳武新之介(特任研究員)が 脳アミロイド血管症の一剖検例を報告

徳武新之介(特任研究員)が東北神経病理研究会(2019年10月26日)で脳アミロイド血管症の一剖検例を報告しました。

総説「脳卒中における血管壁の病理」が画像診断9月号(2019年8月25日発行)に掲載されました

良質な光沢紙を使った雑誌なので写真がよく映えます。詳しくは画像診断 39(10): 1108-1121, 2019にて是非ご覧ください。

画像診断 Vol.39 No.10

須藤冴子(特任研究員)が優秀学生ポスター賞受賞

第60回日本神経病理学会総会学術研究会(2019年7月14日から16日 名古屋市)で須藤冴子(特任研究員,秋田大学医学部5年)を筆頭演者とする症例報告「脳膿瘍治療後のグリア瘢痕と海馬硬化症を伴う側頭葉てんかんの1手術例」が優秀学生ポスター賞を受賞しました。

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