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聴神経腫瘍

聴神経腫瘍とは

「良性の脳腫瘍」で聴神経(聴覚や内耳で感じる体のバランスを脳に伝える神経)からできてきます。初めは身体のふらつきや軽い耳鳴りのあることがありますが、あまり苦痛がないため、この時点で発見されることは少ないようです。腫瘍はゆっくりと成長して、徐々に聴力が低下し、その後近くの重要な脳神経や小脳を圧迫します。ほとんどの患者さんはどちらか一側の難聴を自覚され病院を受診されますが、なかには聴神経の周囲の脳神経が障害され、顔面神経麻痺で顔が曲がったり、小脳が障害されて歩けなくなったり、脳全体が極度に圧迫されて、頭痛・吐き気や意識障害が出てから受診される方もいます。

治療について

残念ながら、この腫瘍は薬では治すことができません。治療法としては放射線治療である「ガンマナイフ」と「開頭手術」の二つの方法があります。3センチメートル以下の大きさで見つかった聴神経腫瘍では、一部の例外を除いてほとんどの症例で「ガンマナイフ」が行なわれるようになっています。よって、「開頭手術」は「ガンマナイフ」には適していない聴神経腫瘍が対象になります。「開頭手術」では、現在の医療水準でも聴力を保たせることは非常に難しいことですが、顔面神経を傷つけずに行なうことは比較的容易になってきています。大きく成長した聴神経腫瘍の場合は顔面神経を傷つける可能性があり、腫瘍を残してくることがあります。しかし、顔面神経を手術中に傷つけなかったとしても、腫瘍と顔面神経が接している時などは、一時的に顔面の麻痺が起こることがあります。この麻痺は、ほとんどの症例で自然に軽快します。神経の回復のためにビタミン薬などを内服することがあります。

「開頭手術」では、全身麻酔をかけた状態で、耳の後ろで直径8センチメートル程度の半円状の皮膚切開(切開線に沿って1センチメートル幅で散髪します)をして、骨を削り、その部分から手術用顕微鏡を使って腫瘍を取り除きます。良性腫瘍なので、全摘出により顔面神経などを障害する危険性が高い場合は、腫瘍の一部を残して終了することもあります。手術後、順調に経過すれば10日前後で退院できます。意図的などの理由で腫瘍が残存した場合は、「ガンマナイフ」などで追加治療を行うことがあります。

関連記事:ガンマナイフセンター

秋田県立脳血管研究センターの治療成績(1998年から2010年)

  • 手術件数:51例
  • 手術合併症:顔面神経麻痺3例(5.9パーセント)、術後11日目の皮下出血1例(2パーセント)
  • 手術死亡:0パーセント

手術例の術前後のMRIを示します。

写真:手術前後の比較、54歳男性の例

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