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特殊な動脈瘤(血栓化動脈瘤、大型・巨大動脈瘤)

難しい動脈瘤と言われたら

通常の動脈瘤とは成長の過程が異なり、動脈瘤の壁に血栓が形成され、そこにできた栄養血管から出血を繰り返し、動脈瘤が大きくなる動脈瘤(血栓化動脈瘤)があります。こういった動脈瘤では大型化・巨大化の危険が高いといわれています。逆に一般にはこういった動脈瘤は治療が困難なことが多いのが実情です。当院ではこういった特殊で困難な動脈瘤に対する治療も行っています。

血栓化動脈瘤のMRI画像と脳血管撮影画像

最大径10ミリ以上のものを大型動脈瘤、25ミリを越えるものを巨大動脈瘤といいます。こういった動脈瘤は出血のみならず、腫瘤として脳組織を圧迫して症状を出すこともあります。大型・巨大動脈瘤は、頻度は全動脈瘤の約5パーセント程度ですが、その自然歴の悪さ(破裂のしやすさ・症状の出やすさ)、また治療成績の悪さが知られています。こういった動脈瘤には全く血栓化の無いものもありますが、部分血栓化型が最も多いといわれています。

血栓化動脈瘤の外観と中を開いた写真

巨大脳動脈瘤はある報告では外科治療によって死亡率は31パーセントから4パーセントに減らすことができたものの、後遺症の率は8パーセントからむしろ19パーセントに増えたとされており、治療の難しさを反映しています。また25ミリ以上の未破裂脳動脈瘤の死亡率は8パーセント、後遺症の率は25パーセントであり、自然経過も予後不要であるが治療成績も決して満足いくものではないことも知られています。

椎骨脳底動脈の大型・巨大・血栓化動脈瘤

巨大脳動脈瘤のなかでも、椎骨脳底動脈(小脳などを栄養する動脈)系に発生したものは早期から脳幹圧迫症状を来たしやすく、症候性の自然予後は極めて不良で、80から100パーセントが5年以内に重篤な神経症状を呈するか死亡するといわれています。図でも示したように動脈瘤は徐々にあるいは急激に増大することもあります。ただ治療をした場合の危険度も高く、なかなか安易に治療に踏み切ることが出来ないのも実情です。

写真:血栓化動脈瘤が経年により増大する様子

大型・巨大・血栓化動脈瘤の治療

こういった動脈瘤では通常のクリッピングやコイル塞栓術だけでは治療が出来ないこともしばしばです。一般に新たに血管を作りかえるバイパス術を組み合わせて当院では治療を行っています。

  • 頭の皮膚の血管を使う、浅側頭動脈・中大脳動脈バイパス
  • 手の血管を使う撓骨動脈グラフトによる、ハイフローバイパス

などが当院で行っている手術です。

写真:ハイフローバイパス(腕の血管の移植の例)

当院での実績と合併症

2006年から2010年の治療成績(31例)

治療の内容

  • 直接クリッピング:10
  • ラッピング :1
  • バイパスと母血管遮断 :14(coil塞栓併用:2)
  • コイル塞栓のみ :1
  • 経過観察 :5

成績

死亡:1、重度の障害:6、中等度障害:3、無症状から軽度障害:21例であり、死亡率3パーセント、神経症状悪化率20パーセントとなっています。

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