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正常圧水頭症

脳とそれを取り巻く環境の生理的な状態

脳は豆腐のように柔らかくて頭の骨の中に収まっていますが、硬い骨に直に当たると壊れてしまいます。ですからこの間にクッションとなる水(脳脊髄液)が入っています。この水は脳の中の脳室と呼ばれる部屋の中で常に新しく作り出されて入れ替わっていきます。

CT写真:脳室の様子

正常圧水頭症とは?

ところが何らかの要因でこの水がうまく吸収されないような状態が起こると、水がどんどんたまって大切な脳を圧迫し、脳の機能をマヒさせてしまいます。病気の最初のころには、この水の圧迫のために頭蓋骨の中の圧力は上昇しますが、そのうち脳室が拡大してくると測定した圧力がほぼ正常に戻ってくる状態があり、これを正常圧水頭症と呼んでいます。

CT写真:水頭症の脳室の様子

症状は?

このように脳が押されるとボケてきて、足がふらついたり、尿意がわからなくなり失禁するなどの症状が出てきます。CTスキャンで調べると脳室が大きくなっているのがよくわかります。

治療は?

このような症状はたまっている水をお腹の中などに導いて腹膜の静脈から吸収させたり、直接静脈内へ導いて吸収させると治すことができます。
手術には、頭からお腹へチューブを通す方法と、腰からお腹へチューブを通す方法などがあります。それぞれ脳室-腹腔シャント、腰椎-腹腔シャントといいます。また、頻度は稀ですが、脳室-心房シャントというものもあります。当センターでは、その正常圧水頭症の原因などを考慮して、個々の症例に合わせた適切なシャント手術を選択しています。

イラスト:シャント手術の比較

当センターでの実績

当センターでは2006年から2010年まで総数73人の患者さんがこの手術を受けています。原因疾患はくも膜下出血が最多で84パーセントを占めています。その他は特発性正常圧水頭症、脳出血、脳腫瘍などがあります。

CT写真:手術後の様子

合併症とそれを防ぐための当センターの取り組みと成績

一度シャント手術を受けて、もう一度、またはそれ以上手術が必要になる場合があります。何らかの原因で管が詰まってしまったり、もしくは流れすぎたりすること(機能不全)があるため調整が必要になるからです。管の途中にバルブ(圧調整器)を組み込む手術を行う事もあります。シャントシステムに感染が起こった場合も髄膜炎を起こしてしまうため、入れ替え手術などが必要になる場合があります。また、まれですがチューブの断裂が起こることもあります。当院でのシャント手術の再手術率は14パーセントでその原因のほとんどは機能不全で、その他、感染、腰痛などがあります。
このようにきちんとシャントシステムが機能していることを確認するには症状の変化をよく観察し、手術前の症状が出ていないか確かめることも重要です。時々CTを撮って脳室が拡大していないか、または小さくなりすぎていないかチェックします。
また、当院の手術室には血管撮影装置を導入しており、この血管撮影装置には、手術中にも頭部CT撮影が可能な機能が組み込まれています。症例に応じて、この機能を脳室-腹腔シャント術にも応用しています。より正確かつ安全に、合併症の少ない手術が可能になっています。

CT写真:脳室・腹腔シャントの手術中の様子

手術を受けた方への注意事項

バルブを組み込む手術を受けた後は磁力で圧の設定が変ってしまうため、十分注意してMRI検査を受けてください(受ける前に必ず申告してください)。 MRI検査を受けた後には必ずすぐに脳外科を受診して圧の調整を受けてください。また、バルブ部に強い衝撃は与えないで下さい。

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